今回のゲストは今石洋之さん。『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~1996年/テレビ東京系)の原画からキャリアをスタートし、監督を務めた『天元突破グレンラガン』(2007年)で大ブレイク。現在はNetflixで配信中の監督作『サイバーパンク エッジランナーズ』(2022年)で注目を集めている。そんな今石さんの3本とは? お願いしましょう!
取材・文/渡辺麻紀
<プロフィール>
今石洋之(いまいし・ひろゆき)●1971年10月4日生まれ。東京都出身。アニメーション監督、アニメーター。多摩美術大学美術学部芸術学科映像専攻卒業後、ガイナックスに入社。『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~1996年/テレビ東京系)の動画から始まり、絵コンテ・作画監督などを経て、『天元突破グレンラガン』(2007年/テレビ東京系)、『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇/螺巌篇』(2008年/2009年)の監督を務める。2011年には共同でTRIGGERを設立。以降『キルラキル』(2013~2014年/MBSほか)、『プロメア』(2019年)などオリジナルアニメーションの監督を務める。最新作は『サイバーパンク エッジランナーズ』(Netflix)。
アニメ至上主義者だった僕もびっくりしたんです。なんて面白いんだ!って。
――今石さん、今回は1本目です。どの作品でしょうか?
『ターミネーター』です。というのも、この(ジェームズ・)キャメロンの作品を観て本格的に映画に目覚めたんです。そういう意味で1本目にしました。
――『ターミネーター』は1984年の作品ですが、その前にはあまり映画は観てなかったんですか?
いや『スター・ウォーズ』(1977年)とかはTV放映で観ていたんですが、それほどインパクトはなかった。というのも当時の僕は、アニメ至上主義者で、『スター・ウォーズ』を観ても、アニメのほうがいいんじゃない?って。どんな娯楽よりアニメが優れていると思って疑っていなかった時期なんですよ。
――なるほど!
そういう僕が『ターミネーター』を初めて観て、もうびっくり。何て面白いんだ! これはもしかしたアニメより面白いかもしれないってなっちゃったわけです。
――公開時にご覧になったんですか?
いや、これもTVでオンエアしたときです。映画の存在は知っていて、今日TVでやるから観ようという感じだったと思います。
色々といい点はあるんですが、そのひとつはちゃんとSFしてしっかりアクションしていたこと。『スター・ウォーズ』もSFではあるけど、あれはスペースオペラ的な匂いのほうが強い。『ブレードランナー』(1982年)はSFとしては優れているんですが、アクションがほぼない。僕の好きなSF要素とアクション要素、さらにはロボット要素、それがちゃんと含まれていて、しかも大変面白いという映画は僕にとっては『ターミネーター』が初めてだったんです。それまでSF×アクション×ロボットはアニメの専売特許だと決めつけていたところがありましたからね。
――その組み合わせがツボだったんですね?
そうです。しかもターミネーターは、スケルトン状態になったとき、ストップモーションになるじゃないですか? 実写だけどアニメに近い手法を使っている。あれが着ぐるみだったら、「骨」だけじゃなく「肉」が加わってせっかくの設定が死んでしまうし、等身大のアニマトロニクスだけだとアップはいいけど全身の動きは怪しい。あの時代であのデザインのスケルトンのロボットを動かすにはやはりストップモーションしかない。そういう選択を下すキャメロンっていいなあと思ったんです。もちろん、予算の関係もあったんでしょうけど。
――キャメロンはロジャー・コーマンの会社でSFX担当でしたから、そういう知識もちゃんともっていますよね。
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