藤波、長州、タイガーマスク…あの豪華絢爛の時代に講談師も学ぶところが!【連載『神田伯山の“真”日本プロレス』#4延長戦!】

講談師・神田伯山と実況アナウンサー・清野茂樹が日本のプロレス史を語り尽くす「神田伯山の“真”日本プロレス」(CSテレ朝チャンネル2)。第4回は新日本プロレスの人気が不動のものとなった1978年から1982年にかけてのトピックを取り上げた。藤波辰巳の凱旋帰国、スタン・ハンセン大暴れ、タイガーマスク登場、長州力の大ブレークといった充実のラインアップに、トークはまたしてもヒートアップ! アントニオ猪木の名言「10年もつ選手生活も1年で終わってしまう」をほうふつとさせる熱のこもった収録を終えたばかりの2人に、今回も延長戦でさらに語っていただきました。さらに、第4回の放送が終わった時点でまだ10年しか進んでいない(新日本プロレスは1972年設立)という、まさに“マット界のサグラダ・ファミリア状態”(古舘伊知郎調)となっている番組の今後の展望も!
取材・文/K-Shimbo(目の前で観てみたかった一戦はスタン・ハンセンvsアンドレ・ザ・ジャイアント@田園コロシアム)
撮影/ツダヒロキ(タイムスリップしてカメラマンとして居合わせたいのは飛龍革命の現場@沖縄)

<プロフィール>
神田伯山(かんだ・はくざん)●1983年東京都生まれ。日本講談協会、落語芸術協会所属。2007年、三代目神田松鯉に入門し、「松之丞」。2012年、二ツ目昇進。2020年、真打昇進と同時に六代目神田伯山を襲名。講談師としてもさることながら、講談の魅力を多方に伝えるべく、SNSでの発信やメディア出演など様々な活動を行っている。現在は『お願いランキング・太田伯山ウイカのはなつまみ』(テレビ朝日)、『問わず語りの神田伯山』(TBSラジオ)などに出演している。
清野茂樹(きよの・しげき)●1973年兵庫県生まれ。広島エフエム放送(現・HFM)でアナウンサーとして活躍。『ワールドプロレスリング』(テレビ朝日系)で数々の名実況・名言を生み出した古舘伊知郎アナウンサー(当時)に憧れ、宿願だったプロレス実況の夢を実現すべく、2006年フリーに。2015年には新日本プロレス、WWE、UFCの実況を行い、前人未到のプロレス・格闘技世界3大メジャー団体を実況した唯一のアナウンサーになる。

『神田伯山の“真”日本プロレス』
CSテレ朝チャンネル2 毎月第3土曜 午後11・00~深0・00
出演 神田伯山 清野茂樹(プロレス実況アナウンサー)
●“最もチケットの取れない講談師”の神田伯山と、プロレスに魅せられた実況アナウンサーの清野茂樹が、テレビ朝日に残された貴重な映像を観ながら、プロレスの歴史をマニアックに語り尽くす。そのほか、当事者を招いて真相を探る「真のプロレス人に訊け!」や、現役プロレスラーの魅力を深掘りする「最“真”日本プロレス」といったコーナーも。

最近の講談界もプロレスみたいに、いろんなユニットが出始めた(伯山)

――第4回は、新日本プロレスに次々と新たなスターが誕生し、大物外国人選手たちも集まってくるという飛躍の時代でした。

清野 新間寿(注1)さんが、やはりすごいですね。猪木-モハメド・アリ戦というとんでもない話をまとめ上げたのも、ストロング小林(注2)を口説いて新日本のリングに上げたのも新間さん。藤波という格闘技経験のまったくない選手をスターにしたのも、佐山聡(注3)に国際電話をかけて帰って来い、虎のマスクをかぶれと言ってタイガーマスクにしたのもそうですね。実は、新間さんがものすごいキーパーソン。リング内の猪木さんとリング外の新間さんが車輪のようにうまく回転して、新日本は上昇したっていう印象があります。

注1・新間寿 元新日本プロレス専務取締役営業本部長。猪木の右腕で“過激な仕掛け人”と呼ばれた。
注2・ストロング小林 国際プロレスという他団体のエースだった。
注3・佐山聡 当時はイギリス遠征中。

伯山 プロレスが盛り上がる時って、そういう即戦力となる選手が現れて、うまくピースがはまっていく感じがしますよね。僕は今日、清野さんの解説を聞きながら、どうやったら我々の業界はうまくいくんだろうって、そっちの方に意識が行っていました。プロレスがうらやましいなって思ったんです。

――それはどういうことでしょうか?

伯山 今、講談界には人が少ないんですよ。しかも、講談師は入門から15年や20年経たないと、ある程度の形にならない。けど、この時期の新日本のようにプロレスはいろんな才能が集まってくるし、周囲にその力を引き出されて即戦力になっていく。そこは学ばなければいけないなと。我々の業界はとても時間がかかるんですよ。それに、ハンセンみたいな外国人選手を雇えないですよね、講談は(笑)。

清野 (笑)。

伯山 言語が違いますから、外国人でスターを出すのは難しい。プロレスや相撲と違って、外国人で講談にすごく向いている人がいても、日本語という特有の、外から入りづらい言語があるので。それから、引き抜きもできないです。アブドーラ・ザ・ブッチャー(注4)みたいに、落語協会(注5)から誰かを引き抜くとかは基本できません(笑)。

注4・アブドーラ・ザ・ブッチャー “黒い呪術師”と呼ばれた名レスラー。1981年に全日本プロレスから新日本が引き抜くも、全日本はその報復として新日本の看板外国人レスラーのタイガー・ジェット・シンとスタン・ハンセンを引き抜いた。
注5・落語協会 東京の落語家や講談師による協会。伯山は「落語芸術協会」に所属。

清野 それ、やったらどうなるんですか?

伯山 引き抜きではないんですが、自主的に向こうの協会に行った人も少数いたんです。だけど、落語協会と落語芸術協会では多少文化も違うし、いきなりメインイベンターみたいな扱いはさせないですね。

清野 外様扱いされるということですか?

伯山 そうですね。我々の業界は動いても、プロレスほど興行主体な見せ方はしないですね。じわじわ、新しい場所で演者が馴染んでいく過程を見せるような、地味な展開しかないです(笑)。プロレスでハンセンが全日本に行ったら一気にトップとか、ブッチャーが新日本に来て、すぐに大活躍するみたいなことはないですね。

――プロレスと講談の世界は、まったく違うものなんですね。

伯山 講談の若手もいいのはいるんですが、人数の問題もあって、これからなんです。ただ実は今、落語芸術協会で僕より下の世代が、「芸協カデンツァ」というユニットを作っているんですよ。さらに、その下に「ルート9」という落語家と講談師のユニットがいて、彼らは動画編集がうまく、すごく器用に人を集める。そうすると、「ルート9」に対抗して、そこに入れなかった若手の勢力も出てきた。僕の世代も「成金」というのをやっていたんですけど、プロレスみたいに、いろんなユニットが出始めたんです。

清野 へー、すごい!

伯山 彼らは別にプロレス好きではないのかもしれないけど、ユニットで戦っていくということによって活性化してきているんです。こういう、プロレスと寄席演芸の似ているところや違いについて、この番組の収録ではいろんなことを感じますね。

写真提供:テレビ朝日

最終的に今のプロレスも、すごく肯定したい(伯山)

――興味深いお話、ありがとうございます! 多くの視聴者が気になっている番組の今後についても聞かせてください。

伯山 時間がないらしいんですけど。UWF(注6)は取り上げるんですかね?