おとどちゃん連載・8「『夕焼け』という名前のインクを詰めて」

祝!創業九十一周年!!

高知県桂浜にある小さな水族館から大きな声で、いきものたちの毎日を発信!

桂浜水族館の広報担当・マスコットキャラクターのおとどちゃんが綴る、好評連載第8回!

以前のお話はこちらから。

冬の終わりと春の始まりが交差する朝、「夏ですねぇ」とショッキングピンク色の半袖を纏った飼育員が笑う。

いいえ、まだ春です。

彼は冬にも「夏ですねぇ」と笑い、同じ格好でいた。

ニュースで天気予報士が「明日は、高知市内でも雪が降るかもしれません」と、私たちの胸を高鳴らせるような匂わせ発言をしてくれた日はとても寒く、さすがの彼もフリースを着ていたが、それも午前中だけのことで、午後には半袖姿に戻っていた。小学時代、クラスメイトに必ずひとりはいる一年中半袖半ズボンの子どもを思い出してもらえばわかりやすいだろう。この冬も、彼が冬衣を纏っていたのは数える程しかなかった。

新年を祝ってからの月日の流れは早く、「一月往ぬる二月逃げる三月去る」という喩えが身に染みる。気がつくと三月も下旬に差しかかり、来たる四月一日に桂浜水族館は創業九一周年を迎える。四月からは組織体制が変わり、これまで「海獣班」と「魚類班」の二チームに分かれてそれぞれにリーダーを据えていた飼育員たちは、ひとつのチームとして一本化されることになっている。桂浜水族館は、従業員二十名程で経営しているとても小さな水族館で、飼育員は若手が七名しかいない。小さな施設であるために、これまでも、魚類担当として入社した飼育員が海獣担当となったり、海獣担当であっても魚類の業務を担ったりしていた。時に事務局スタッフが飼育業務に携わり、飼育員がチケット販売やお土産販売をすることもある。どうしても人員不足な日は、所属部署にこだわらず業務を分担し合っているのだ。

マイナスからのスタート。六年前に新しいメンバーが集い、本格的に改革を始めた頃から、従業員全員がこの水族館を未来に繋げるために奮闘してきた。違う道を選んだ仲間の背中に手を振り、寂しさを噛みしめてきた。新しい仲間と出会い、手を繋いで波打ち際を駆けてきた。日々をともに生きる中で、変化や成長を通して絆を強め、仲を深めてきた。

 

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